——FUDGEも長く続いていて、作り手も代わったりしていますが、今でもここは絶対に変わらず大切にしている、ということはありますか?
月刊誌『FUDGE』の鈴木幹也編集長:(以下、鈴木)
ファッション誌というのは、流行りを追っていくのが基本としてあると思うのですが、FUDGEというのはそれだけでない、強く言うと、そこに逆らっている媒体の一つだと考えています。
「トレンドのファッションは押さえつつも、そのままは嫌」「流行りとは別に好きなものがたくさんある」「本当に自分が好きなものってなんだろう?」そんなふうに考える女性たちを応援している媒体、後押しをしている媒体だと思っています。
—–FUDGEはクリエイティブなところが強みの一つだと思うのですが、どのように考えて制作していますか?
鈴木)
ファッション誌というのはとかく現実から離れた、憧れの非日常感を出そうとしがちだと思うのですが、FUDGEはいかに日常感を出すかということを一つのテーマにしています。確かに外国籍のモデルさんで構成しているので、一瞬遠く見えがちなのですが、それはいい意味でも悪い意味でも変にイメージが付かないからで、言い換えると「この洋服をそのまま真似していいんだよ」「そんな海外の暮らしって素敵だよね」というふうに届けたいのです。
要は、FUDGEはいかにもファッション誌的な撮影をしない媒体だと思っていて、いかに読者のみなさんが入口として入ってこられるか、が大事だと考えています。
スタイリングにしても同じことが言えます。例えばデニムひとつ取っても、ベレー帽だったり、眼鏡だったり、バレエシューズだったりといった組み合わせがあるとして、それを時代時代によって使い方、合わせ方を変えて提案したい。リーバイスの501という普遍的なアイテムがあるとして、じゃあ今年は32インチで行こう、来年は28インチのタイトめにしようとか、そうやってひとつの時代の流れを作っていきたいですね。
——今のFUDGEの読者層とその特徴を表すとどんなイメージでしょうか?
鈴木)
パリジェンヌ、ロンドンガールの文化やスタイリングに関心を持ちながらも、今の時代のエッセンスを加えて自分らしいファッションスタイルを持っている読者が多いです。年齢的には、もちろん「ミレニアム世代」「Z世代」と呼ばれる20代には強く支持されていますが、全体的に見ると、雑誌読者の年齢層は実は20代から40代までと幅広く、他誌のような年齢層でセグメントしていない雑誌だと言えます。
彼女たちはFUDGEの持つ世界観で繋がっているため、例えばFUDGE創刊時から一緒に年を重ねてくださった方が、今40代後半を迎えていて、その娘さんに引き継がれている。今、「FUDGE FRIEND」というオフィシャルガール(インフルエンサー)を公募しているのですが、応募者のFUDGEに触れたきっかけというのに「お母さんが小学生の時に見せてくれた」「中学生の時、お母さんの買った雑誌を一緒に読んでいた」という子たちが、今17歳、18歳になって応募してきてくれたりもしています。
——FUDGE.jpはどうですか?
FUDGE.jp編集長・小口英子:(以下、小口)
FUDGE本誌に比べると少し若いでしょうね。
FUDGE.jpの作り方、見せ方としては、雑誌よりさらにリアルというか、日常に寄り添った内容というのを心がけています。本誌のほうが「そういう世界観を打ち出して見せている」としたら、FUDGE.jpでは「それを読者の方たちが実際に日常に取り入れるにはどうしたらいいか」ということをテーマにしています。
2022年に本誌創刊20周年を記念して始めたオフィシャルガール「FUDGE FRIEND」には、FUDGEらしくはありつつも様々なタイプがいて、例えば身長152cmの低身長の子もいれば170cmの長身の子、ベーシックなコーディネートを好むタイプ、と反対にトレンドをうまく押さえているタイプ、1児のママがいたりと、見ている皆さんが自分に置き換えやすいのでは、と思います。
ちなみに、「FUDGE FRIEND」は、先だって第二弾の募集をして増員していきます。余談ですが、すでに芸能界で活躍している方の応募もあり驚きました!!
——「FUDGE FRIEND」への広告の問い合わせが多いとのことですが、具体的にどのような企画に彼女たちが登場するのでしょうか?
鈴木)
それがハイブランドからの問い合わせが多く、実際に先方様の広告企画に取り入れられています。ただ、「FUDGE FRIEND」の彼女たちのSNSフォロワー数って、そのハイブランドが起用している芸能人とかに比べると、決して多くはありません。数字だけ注視するのならば、広告を入れる価値って少ないのかも知れませんが、クライアント様からすると芸能人や他の媒体に比べて「FUDGE FRIEND」は、きちんと媒体と親和性を持った人たちとしての”オフィシャルインフルエンサー”だと認識していただいています。
つまり、見かけの数字より、FUDGEブランドにどれだけ紐づいているかを大切にされるので、「FUDGE FRIEND」の目線やセレクト感を大切にしています。
小口)
それでも、フォロワーなどの数字に関しては無視しているわけではないので、彼女たちの個性を生かしながら企画を行なっていてそれぞれのアカウントも順調に伸びていますし、FUDGEの公式Instagramでしっかりフォローしています。
今ではFUDGEに関するインスタアカウントは6つあり、合計フォロワー数が約100万。最近ではリール動画なども積極的に増やしているので、さらに伸ばしていきたいと思っています。 そういう意味ではFUDGEは元々インスタのフォロワー数が多かったので、一から自分たちの世界観を表現する「FUDGE FRIEND」を育てていこうと思えたのも事実です。
——FUDGEって、リアルイベントが多いですよね?
鈴木)
イベントの開催理由は、FUDGEの世界観をリアルに体現することによって、読者の方に理解を深めてもらう、繋がりを体感してもらう、といったことと、読者・ファンとの交流の場を作る、ということもあります。
その中でも、「FUDGE Marché」は、FUDGEで紹介したブランド、商品などを実際に買えるということもあって人気を得ています。
また、FUDGEの世界観と一緒にコラボしたいというお話をいただくので、様々な場所で開催しています。
京都・東本願寺で「FUDGE Marché」を開催したときは、人が多すぎて京都駅周辺までFUDGE読者が溢れかえったということもありましたが、おかげで様々な自治体の皆様からもお問い合わせをいただくようになりました。
休日にカフェや美術館巡りなどを楽しむ読者が多いので、イベント場所にはこだわっています。
「ブランディングからやりたい」「イベントだけではなく、本誌やウェブ、FUDGE FRIENDとも連動したい」という話もいただきます。 それまでの「メディア発からのイベント」と逆の「イベント発からのメディア」という逆流現象も起こり、FUDGEという世界観を軸としてスケールが大きくなっているのを実感しています。
——2024年に仕掛けた広告企画で特に印象に残ったものはありますか?
鈴木)
僕個人としては、横に展開できるのがやっぱりFUDGEの強さだと思っていて、例えば雑誌のコラボレーションで言うと、女性向けファッション誌『FUDGE』と男性向けファッション誌『men’s FUDGE』でリンクができる。これは他社の女性誌、男性誌ではなかなかできることではないと思います。読者層が被っていることで、FUDGE、men’s FUDGEでタイアップをしながらウェブにも落とし込んでいく、さらに関連した冊子を作る、これってとてもFUDGEっぽいと思うのです。デジタル全盛の今、あえてアナログなことをやる。デジタルで最先端のことをやり、アナログでもお客さんが付く。 FUDGEは、アナログもデジタルもリアル(イベント)もあり、FUDGE FRIENDもある、というのが強さ、武器なのではないかと思います。
小口)
また、ブリッジ企画で言うと、今年は動画の需要も増えてきました。
最近作ったものでは、男女モデルを起用してその二人がどのように過ごすかということをテーマにシナリオを起こして動画にしました。また、ハイブランドの動画では、そのブランドに合わせたイメージを優先した動画というのも、その分野のディレクターをブッキングして制作しました。私たちの強みは、ハイブランドからカジュアルブランドまで幅広くそれぞれの世界観に繋がっているということなので、映像にする際、イメージを共有しやすいというのがお声をかけていただく理由にもなっているようです。
——さて、そんなFUDGEは2025年どうなっていきますか?
鈴木)
今の時代、ネットで触れたもので自身が体験した気になってしまうことが多く、リアルな体験が減ってきていると思うのです。そこで雑誌では「実体験」という、あえてアナログ的な部分を大事にしようと考えています
FUDGEは海外取材を頻繁に誌面で展開していますが、読者の皆様には、ただファッションを見てもらうわけではなく、実際に海外に行きたいなと思ってもらえればと。
実際に住んでいる現地の子から生活のアイディアをもらったりして、これまでも知られている情報でも実はその意味がどういうものなのかとか、誌面からその現地のリアルな雰囲気を感じて欲しいと思っています。
そういう意味ではクライアント様のブランディングにも通じるところがあると思いますが、ファッションの奥にある世界観をもっと伝えていければと思います。
小口)
2025年は「人との繋がり」をテーマにしていて、FUDGEのまわりの人、読者の方々とさらに深く関わっていきたいですね。先ほど説明した「FUDGE FRIEND」をもっと育てていく、というのはもちろんなのですが、「人」を通してさらにFUDGEのファンを拡げていきたいので、彼女たちを筆頭に、新たにFUDGEと親和性の高い方たちとつながっていけたらいいかな、と思っています。
FUDGE.jpで抱えている公式ブロガー&インフルエンサー「FUDGENA(ファッジーナ)」という企画の拡大を狙ってインフルエンサーだったり、アーティストやクリエイターなど世界観を共有できる方たちとご一緒していきたいです。
クライアント様にはその打ち出されるテーマに合わせて「FUDGE FRIEND」や「FUDGENA」など、より親和性のある方をご提案していけるように用意していきます。
また、公式サイトでも人気コンテンツのスナップですが、彼女たちにも企画での参加のオファーを出せるようにしています。
「FUDGE的な人を紹介してほしい」というお話もいただくことが増えているので、私たちがスナップで撮影した方たちとももっと繋がっていって、さらに提案できるよう強化していきたいですね。
——2024年には、「FUDGEランニング部」という実際に活動する場が生まれましたが、こういったことは増えるのでしょうか?
小口)
クライアント様からも読者の皆様からもFUDGEと「もっと繋がりたい」という要望があるので、うまく合致することを考えていきたいです。
ランニング部だけではなく、FUDGEがもっと読者と関われる場所、読者が集まることができる場所を増やしていきますし、イベントはもちろん、今年展開した「FUDGEコーヒー便」などオリジナルのフード企画の部分も「FUDGEカフェ」として紅茶やお菓子などに拡げていきたいし、新しい企画を意欲的に考えていきたいですね。
あと、現在10万人ほど入会していただいているFUDGE.jpの「プレミアム会員」向けに情報を提供したり、集まってもらったり、いろいろな体験をする機会を設けて会員活動の活性化も図っていくつもりです。
これまでの施策から分かるように、ウェブでは企画をいろいろと試せるので、クライアント様からもなんでも「こういうお客様と繋がりたい」と気軽に相談いただければと思います。
——では最後に、この記事を読んでいる方に伝えたいことはありますか?
鈴木)
これまでもそうですが、ちゃんと読者を見て、読者と繋がっているということを大事にしながら、FUDGEのカルチャーをさらに突き詰めたいですね。
また、FUDGEが、なぜこの時代に紙媒体に広告をいただいているかというと、間違いなく反響がある、ということだと思います。クライアント様から「読者の顔が見える」と言われ続けられるように作っていきたいなと。
また僕は、単に広告をご出稿いただく、という関係ではなく、クライアント様と一緒に大きくなっていきたい、と考えています。
小口)
来年は、読者の方々の日常(リアル)に寄り添い、時代感を見据えた内容など様々な企画に取り組んでいくのはもちろんですが、やはり先ほどお話ししたように、読者とクライアント様と読者の皆様とコミュニケーションを増やしたいと思います。そのために、どういうニーズがあるのかをしっかりと掴めるように努めていきたいと思います。
鈴木・小口)
「FUDGE」はもっとリアルで、それでいてより皆様と繋がる橋になるべく成長していくので、期待してください!!
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積極的に海外の「衣食住」を紹介。中でも日本で撮影できない素敵なロケーションを行うモデル撮影は、FUDGE醍醐味のひとつといえます。
また、海外の日常感を切り取るワールドスナップは、FUDGEの人気企画であり、最大の魅力と言えます。毎回、足を運んで撮影した生きた情報を掲載しています。
『FUDGE』のオフィシャルガール「FUDGE FRIEND」は、創刊20周年を機に開催したオーディションで誕生しました。FUDGEの企画をはじめ、公式Instagramでの投稿、ファッションブランドのカタログモデル、イベントのPRなど、活動の幅を広げています。
FUDGEが選んだハンドメイド作家が集うイベント「FUDGE Marché」。2024年3月2日・3日には、京都 東本願寺 名勝・渉成園で開催し、2,300人のFUDGEファンが来てくれました!
公式Instagramは、@fudge_magazine を中心に6つのアカウントを運営。最近はリール動画にも力を入れており、本誌撮影の裏側やブランドのイメージムービー、コーディネートの参考動画、ショップ取材など様々な企画を発信中です。
「ランニング×カフェ」をテーマに、FUDGEの読者や会員向けに「FUDGEランニング部」を発足。初心者の方を中心にゆる〜く走るから気軽に参加できます。帰りにカフェに寄って、参加者みなさんでコミュニケーションを取れるのも好評です。